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高森明勅
2021.1.4 06:00皇室

敬宮殿下のご誕生

平成13年に東宮職(とうぐうしょく)御用掛(ごようがかり)
を拝命し、皇后陛下(当時は皇太子妃)のご妊娠、ご出産に関わる
医師団の責任者を務められた堤治氏。

敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下ご誕生を巡るエピソード
を紹介されている。

「産科医として難しかったのは、雅子さまに入院していただくタイミングです。
警備や報道への対応に約2時間を要すため、入院を決めても、
すぐに病院にお越しいただけるわけではありません。
陣痛が始まってからでは遅く、あまり早いと生まれるまでに
時間がかかってしまう。
陛下は『一般の方と違う扱いはしていただかなくて結構です』と
おっしゃってくださいましたが、そうはいきません。
当時の最新技術を用いた試作品の『遠隔分娩監視装置』という
“秘密兵器”を使って母子の状況をパソコンで逐一(ちくいち)確認し、
タイミングを見計らって入院を決めたのです」

「雅子さまの日頃の努力の甲斐もあり、出産は大変スムーズに進み、
産後すぐに雅子さまに愛子さまを抱いていただきました。
雅子さまは笑顔で、優しい母親の顔をされていました。
生まれたての愛子さまを抱いた陛下は、少々肩に力が入っていたようです。
おふたりは目と目で何か通じ合うように見つめ合い、
後に会見でおっしゃられたように『生まれてきてくれてありがとう』という
喜びに満ちた表情をされていらっしゃいました」

「お誕生から数日経(た)ったころ、宮内庁病院の新生児室を訪れた陛下が、
すやすやと眠られている愛子さまを見ながら
『このコット(愛子さまが休まれているベビーベッド)は
私が使っていたものなのです。覚えてはいませんけどね』
と茶目っぽく懐かしそうに話してくださったことがあります。
それは、一般的なコットと変わらないプラスチック製のものでしたが、
質素でものを大切にする皇室の精神を垣間(かいま)見たような気が致しました」

「ご退院の挨拶の折、愛子さまを抱いた雅子さまが、
『お産がとても楽しかった』とおっしゃったのが印象に残っています。
その思いがけないお言葉に、私は頭が下がりました。
それまで、私に妊婦さんに『お産は楽しいものだ』と言ったことは
めったにありませんでした。
しかし、雅子さまがおっしゃったように『お産は楽しいもの』であり、
そんなお産を目標にすべきなのだと認識を改めました。
そのお言葉は、その後の産科医人生の励みになっています」

このようにしてご誕生になった敬宮殿下。
今年のお誕生日(12月1日)で二十歳(はたち)を迎えられる。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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